「教科書の平面の図だけでは、分子の立体構造がどうしてもイメージできない」——化学を学んでいると、誰もが一度はぶつかる壁です。
そこで、ブラウザだけで分子模型を組み立てられる無料ツールを作りました。インストール不要・登録不要で、スマホでもパソコンでもそのまま使えます。
いちばんのこだわりは、結合角と結合距離を実測値どおりに再現していることです。メタンなら109.5°、水なら104.5°というように、原子を置けば自動的に正しい立体構造になります。さらに、大学の有機化学で必要になるニューマン投影式やR体・S体の判定にも対応しました。
分子模型ビルダー(無料・登録不要)
下の画面でそのまま動きます。まずは「見本」タブから好きな分子を選んでみてください。
画面が小さい場合は別画面で開くと使いやすくなります。データは端末内に保存され、外部に送信されることはありません。
このツールでできること
「無料の分子模型ツール」は他にもありますが、多くは球と棒をつなぐだけで、角度が正確でなかったり、大学レベルの機能が使えなかったりします。このツールは次の点にこだわりました。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 正確な立体構造 | 結合角・結合距離を実測値で再現。原子を置くだけで正しい形になる |
| 距離と角度の測定 | 原子を2つ選ぶと結合距離、3つ選ぶと結合角を表示 |
| 4つの表示モード | 球棒モデル/空間充填モデル/構造式(平面)/σ結合・π結合 |
| ニューマン投影式 | ねじれ角を数値表示。重なり形・ねじれ形・アンチ形も自動判定 |
| R体・S体の判定 | CIP順位則にもとづき不斉炭素を自動で判定 |
| E体・Z体の判定 | 二重結合の立体配置を自動で判定 |
| 混成軌道の表示 | 各原子が sp³・sp²・sp のどれかを表示 |
| 非共有電子対 | 電子対の位置を電子雲として可視化 |
| 共鳴の可視化 | ベンゼンなどのπ電子雲を環全体に広がる形で表示 |
| 環の作成 | ベンゼン環をスタンプで追加。縮合させてナフタレンなども作れる |
| 画像の保存 | 作った分子をPNG画像で保存。レポートにそのまま使える |
| 保存と共有 | 作った分子を保存し、共有コードで友だちや先生に渡せる |
基本的な使い方
分子を回す・拡大する
画面をドラッグすると分子が回転します。スマホなら指でなぞるだけです。拡大・縮小は、パソコンならマウスホイール、スマホなら2本指のピンチ操作でできます。
結合距離と結合角を測る
原子をタップ(クリック)すると選択できます。
- 原子を2つ選ぶ → 結合距離が pm 単位で表示されます
- 原子を3つ選ぶ → 結合角が表示されます(2番目に選んだ原子が角の頂点になります)
「メタンの H–C–H は本当に109.5°なのか」を自分で確かめられます。
自分で分子を組み立てる
「つくる」タブを開くと、原子を追加できます。
- くっつけたい原子をタップして選ぶ
- 元素ボタン(H・C・N・O など)を押す
- 選んだ原子に、正しい角度で新しい原子がつきます
結合の種類は「単結合・二重結合・三重結合」から選べます。手が足りないときは自動で水素が外れるので、たとえばメタンの炭素に二重結合で酸素をつけると、そのままホルムアルデヒドになります。
水素を選んでから元素ボタンを押すと、その水素が置き換わります。 メタンの水素をひとつ選んで「Cl」を押せばクロロメタンです。
ベンゼン環をつくる
「つくる」タブの環のスタンプを使います。
- 何も選ばずに押す → ベンゼンがそのまま出てくる
- 原子を1つ選んで押す → その原子に環がつながる(トルエンなど)
- 隣り合った2原子を選んで押す → 環が縮合する(ナフタレンができる)
もう一度縮合させればアントラセンになります。3員環・4員環・5員環のスタンプもあるので、シクロプロパンやシクロペンタンも一瞬で作れます。
主な分子の結合角・結合距離 一覧
テスト前の確認用にまとめました。すべてツール内で実際に測定できる値です。
| 分子 | 形 | 結合角 | 結合距離 |
|---|---|---|---|
| メタン CH4 | 正四面体形 | 109.5° | C–H 109 pm |
| アンモニア NH3 | 三角錐形 | 107° | N–H 101 pm |
| 水 H2O | 折れ線形 | 104.5° | O–H 96 pm |
| 硫化水素 H2S | 折れ線形 | 92.1° | S–H 134 pm |
| 二酸化炭素 CO2 | 直線形 | 180° | C=O 123 pm |
| エチレン C2H4 | 平面三角形 | 120° | C=C 134 pm |
| アセチレン C2H2 | 直線形 | 180° | C≡C 120 pm |
| ホルムアルデヒド HCHO | 平面三角形 | 120° | C=O 123 pm |
| ベンゼン C6H6 | 正六角形(平面) | 120° | C–C 139.9 pm |
| シクロヘキサン | いす形 | 111.4° | C–C 153.6 pm |
| シクロプロパン | 正三角形 | 60° | C–C 151 pm |
※ pm(ピコメートル)は 1 pm = 10-12 m。1 Å(オングストローム)= 100 pm です。
なぜ水は104.5°で、メタンは109.5°なのか
どちらも中心原子のまわりに電子対が4組ある点は同じです。ちがいは非共有電子対(孤立電子対)の数です。
非共有電子対は結合に使われていないぶん、中心原子の近くに広がっていて、まわりの結合を強く押しのけます。そのため非共有電子対が増えるほど、結合角は正四面体の109.5°より小さくなります。
| 電子対の数 | 非共有電子対 | 形 | 結合角 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 2組 | 0 | 直線形 | 180° | CO2、C2H2 |
| 3組 | 0 | 平面三角形 | 120° | C2H4、HCHO |
| 4組 | 0 | 正四面体形 | 109.5° | CH4 |
| 4組 | 1 | 三角錐形 | 107° | NH3 |
| 4組 | 2 | 折れ線形 | 104.5° | H2O |
これがVSEPR理論(原子価殻電子対反発則)の考え方です。ツールの「非共有電子対」ボタンを押すと、電子対が黄色い雲として表示されるので、「どこが押しのけているのか」が目で見えます。
ニューマン投影式の使い方【大学の有機化学】
ニューマン投影式は、ある結合を真正面から見て、手前と奥の置換基の位置関係を表す図です。立体配座(コンホメーション)を学ぶときに必ず出てきますが、平面の図だけだと理解しにくいところです。
ツールでの出し方
- 「見本」タブ →「大学の有機化学」からブタンまたはエタンを選ぶ
- 軸にしたい結合の手前の原子 → 奥の原子の順にタップする
- 「表示」タブからニューマン投影を選ぶ
ねじれ角が数値で表示され、その状態が重なり形・ねじれ形・アンチ形のどれなのかも判定されます。
覚えておきたい3つの形
| 名称 | ねじれ角 | 安定性 |
|---|---|---|
| 重なり形(eclipsed) | 0° | 不安定(置換基が最も近い) |
| ねじれ形・ゴーシュ(gauche) | 60° | 比較的安定 |
| アンチ形(anti) | 180° | 最も安定 |
ブタンの場合、両端のメチル基どうしが最も離れるアンチ形(180°)が最安定です。ツールで分子を回しながらニューマン投影を見ると、この関係が直感的につかめます。
R体・S体の見分け方【CIP順位則】
不斉炭素(4つの異なる基がついた炭素)をもつ分子には、鏡像の関係にある2種類が存在します。この2つを区別するのがR/S表示です。
判定の手順
- 不斉炭素についている4つの基に優先順位をつける(CIP順位則)
- 最も優先順位が低い基を、自分から見て奥に向ける
- 残り3つを優先順位1→2→3の順にたどる
- 時計回りならR体、反時計回りならS体
CIP順位則のルール
優先順位は次のように決めます。
- 原子番号が大きいほど優先(I > Br > Cl > S > O > N > C > H)
- 直接ついた原子が同じなら、その先についている原子を比べる
- 二重結合・三重結合は、その原子が複製されているとみなす(C=O は O が2つついているとみなす)
たとえば乳酸の不斉炭素なら、–OH > –COOH > –CH3 > –H の順になります。–COOH が –CH3 より優先されるのは、先についているのが (O, O, O) と (H, H, H) だからです。
ツールで確かめる
「見本」タブの「立体異性体」から乳酸のR体とS体を切り替えると、分子の横に (R) (S) が表示されます。同じ構造式なのに立体が違うことを、回しながら確認できます。「大学の有機化学」タブにはアラニンのR体・S体も入れてあります。
混成軌道と電子式を見る
「表示」タブの電子式・混成軌道モードにすると、各原子の下に sp³・sp²・sp が表示され、非共有電子対も点と電子雲で描かれます。
| 混成軌道 | 電子対の数 | 形 | 例 |
|---|---|---|---|
| sp³ | 4組 | 正四面体形 | メタン、水、アンモニア |
| sp² | 3組 | 平面三角形 | エチレン、ベンゼン |
| sp | 2組 | 直線形 | アセチレン、二酸化炭素 |
ベンゼンの共鳴を目で見る
ベンゼンの構造式は単結合と二重結合が交互に描かれますが、実際の6本の結合はすべて同じ長さ(139.9 pm)です。単結合(154 pm)と二重結合(134 pm)のちょうど中間にあたります。
これは6個のπ電子が特定の場所に固定されず、環全体に広がっているためです。これを共鳴(非局在化)と呼びます。
「表示」タブのσ・π結合モードでベンゼンを見ると、交互の二重結合ではなく、環の上下に広がったドーナツ状の電子雲として描かれます。教科書の「構造式では交互に描くけれど、実際は均一」という説明が、そのまま画面で確認できます。
実物の分子模型キットもおすすめ
画面の中で構造をつかんだら、実物の分子模型キットを手元に置くとさらに理解が進みます。指で組み立てる感覚は画面では得られませんし、試験勉強中に机の上に置いておけるのも利点です。
選ぶときのポイントは次のとおりです。
- 高校化学までなら、炭素・水素・酸素・窒素が入った基本セットで十分
- 大学の有機化学なら、原子数が多く、二重結合・三重結合用の柔らかい結合パーツが入ったものを選ぶ
- ベンゼン環を何度も作るなら、原子のパーツ数が多いセットのほうがストレスがない
よくある質問
本当に無料ですか?
はい。完全無料で、会員登録もアプリのインストールも不要です。機能制限もありません。
スマホでも使えますか?
使えます。指でドラッグすると回転、2本指のピンチで拡大縮小できます。
作った分子は保存できますか?
できます。「保存」タブから名前をつけて保存すると、次に開いたときも残っています。共有コードをコピーして友だちや先生に渡すこともできます。データは端末内に保存され、外部のサーバーには送信されません。
レポートに画像を貼りたいのですが
右上の「画像」ボタンを押すと、分子名と分子式が入ったPNG画像が保存されます。そのままレポートや資料に貼れます。
ベンゼンの結合はなぜ交互に描かれているのですか?
構造式(ケクレ構造)の慣習にあわせています。実際の結合の長さはすべて等しく139.9 pmで統一してあり、σ・π結合モードでは共鳴した電子雲として表示されます。
どんな分子まで作れますか?
H・C・N・O・F・Cl・Br・I・S・P・B・Si の12種類の原子が使えます。鎖状の分子から、ベンゼン環・ナフタレン・アントラセンのような縮合環まで作れます。
まとめ
分子の立体構造は、平面の図をながめているだけではなかなか身につきません。自分で回して、測って、組み立てるのがいちばんの近道です。
- 結合角・結合距離は実測値どおりなので、テスト前の確認にそのまま使える
- ニューマン投影式・R/S判定・共鳴表示まで無料で使える
- インストール不要、スマホ対応、作った分子は保存・共有できる
高校化学の復習から大学の有機化学まで対応しています。ブックマークして、勉強のおともに使ってもらえたらうれしいです。


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